北方事件
(ウィキペディアから)
概要
1989年1月27日午後5時頃、佐賀県杵島郡北方町大峠の山林近くでドライブ中の夫婦が崖下に落とされている女性の遺体計3体を発見し警察に通報。被害者は飲食店従業員 F(当時48歳)、主婦 N(当時50歳)、会社員 Y(当時37歳)と判明。殺害された日は、Fが1987年7月8日、Nが1988年12月7日で、Yは遺体発見の2日前の1月25日とみられている。被害者の物と思われる遺留品が遺体発見現場の周囲2キロ圏内に点々と捨てられていた。
同年11月、別件で拘置されていた男性(当時26歳)が佐賀県警の捜査本部(大町警察署)による取り調べに対し、3人殺害の犯行を自供し、犯行を認める上申書を書いたが、すぐに否認に転じた。男性は事件発生当時から捜査線上に浮かんでおり、同年10月4日には覚せい剤取締法違反容疑で、大町警察署に逮捕され、同月に起訴された。男性はYと顔見知りだったことなどから、佐賀県警が起訴・拘置中に事情聴取したところ、男性は3人殺害を認める上申書を提出したが、その後否認に転じたため県警は逮捕を見送った[9]。その後、男性は佐賀地裁武雄支部で覚せい剤取締法違反の罪により、懲役1年6月の判決を受け、鹿児島刑務所に服役した。出所後、男性は1993年(平成5年)12月10日に福岡県北九州市若松区の住宅で包丁を振り回したとして福岡県若松警察署に現行犯逮捕された。この時、男性は下着一枚だけで意味不明なことを叫んでおり、取り調べに対し「覚醒剤を使っていた」と供述していた。またこの事件の際には若松署に急行した佐賀県警の捜査員2人から殺人事件の話を切り出されるも、「弁護士を呼べ」の一点張りだった。また2001年(平成13年)11月28日には、鹿児島県大隅町や同県大崎町で盗み目的の住居侵入を繰り返したとして、鹿児島県警大隅署などに住居侵入と窃盗未遂の容疑で逮捕された。その後、2002年(平成14年)1月9日には鹿児島県警に別の窃盗容疑などで再逮捕され、同年3月12日には鹿児島地方裁判所鹿屋支部で窃盗未遂罪などにより、懲役2年の判決を言い渡されている。この間、男性は定職に就かず九州一円でホテルに宿泊してはそこを拠点に盗みを行って生活費を稼いでいたという。
2002年3月、佐賀県警は捜査員を鹿児島に派遣し、鹿児島刑務所に服役していた男性から事情聴取したが、ほとんど黙秘していた。しかし同年6月11日になって佐賀県警は鹿児島刑務所に服役中の男性を、Yの殺害容疑で逮捕した。その後、同年7月2日には佐賀地検がYに対する殺人罪で男性を起訴し、同日には県警がH殺害容疑で男性を再逮捕した。同事件の公訴時効成立は7月8日0時に迫っていたが、佐賀地検はその6時間20分前となる7日17時40分、男性をHに対する殺人罪で追起訴した。同月9日、佐賀県警はNに対する殺人容疑で男性を再逮捕し、佐賀地裁は同月30日に同罪で追起訴した。10月22日より公判が開始され、検察側は死刑を求刑したが、2005年4月10日、佐賀地裁で行なわれた公判で、物証の乏しさや上申書の証拠価値の無さ(限度を越えた取り調べの上で担当者の誘導により作成されたと認定)などにより、男性に無罪が言い渡された。
その後検察側が控訴していたが、2007年3月19日の福岡高裁でも一審の佐賀地裁と同様に無罪の判決が言い渡されている。二審では検察側が新たにミトコンドリアDNAの鑑定結果を提出するも、被告を有罪とする根拠とは認められなかった。なお、判決では長期間に渡って被疑者を拘束した上での取り調べなど佐賀県警察の杜撰な捜査が指弾された。3月29日に福岡高等検察庁が最高検察庁と協議した結果、二審の判決には上告に必要とされるであろう重大な事実誤認ないしは判例違反が見あたらない上に、原判決を覆すのに必要とされる物証も乏しいことから上告を断念。4月2日の上告期限を過ぎても上告せず、被告の無罪が確定した。これによって、北方事件との関連が疑われている4つの事件も含めて公訴時効が成立し、実質的には未解決事件となった。また、二審の判決でも指摘されたような佐賀県警や検察の杜撰な捜査、起訴の有り様も批判された。
補足
- 北方事件で無罪が確定した元被告人の男性は2011年(平成23年)ごろから覚醒剤の使用を始め、生活に困窮したことから同年6月から12月にかけて福岡・宮崎の両県で住宅に侵入して窃盗を繰り返した(被害額は約23万円など)として、覚せい剤取締法違反・窃盗の罪に問われ、2012年(平成24年)6月11日に福岡地方裁判所(深野英一裁判官)で懲役2年10月(求刑:懲役3年6月)の実刑判決を言い渡されている。福岡県警察捜査三課などによる合同捜査班によれば、福岡・大分・宮崎・鹿児島の4県で計127件、総額約436万円の窃盗被害が確認されている。また、2020年(令和2年)8月には山口県長門市で窃盗・住居侵入事件を起こして逮捕され、長門警察署の捜査により、山口・鹿児島など4県で14件の窃盗事件(被害額は現金計約30万7300円と、財布など3点:計4万5300円相当)を起こしていたことが確認されている。
